■日本酒基礎講座(16)「発酵と微生物・酵素の関係.2」

発酵と微生物・酵素の関係.2

前回は、日本酒製造において重要な役割を果たしている、麹(カビ)・酵母と、細菌についてご説明いたしました

 

今回は、その微生物たちとアルコール度数の関係と、製造工程の中で非常に重要な役割を担っている、麹が出す「酵素」について、詳しくご説明いたします

 

1.微生物の生育とアルコール

  • 微生物は一般に濃度の低いアルコールに対しても弱く、活動を停止する
  • 一方、醸造に関わる酵母や一部の乳酸菌は、アルコールに強いと言える
  • 清酒酵母のアルコールの限界値は18~20度
  • ワイン酵母では13~15度が発酵の限界
  • ワイン醸造のMLF乳酸菌でも、生育限界はアルコール分14度
  • 日本酒で問題となる火落ち菌の中には、アルコール分21度前後まで増殖できるものがある
  • 衛生管理の徹底に加え、加熱殺菌「火入れ」及び器具の殺菌が重要

 

 

2.酵素とでんぷんの関係

  • 酵素:触媒の働きを持つたんぱく質の総称
  • 触媒:化学反応を速めるが、自分自身は変わらない物
  1. でんぷん分解酵素:アミラーゼ
  2. タンパク質分解酵素:プロテアーゼ
  3. 脂肪分解酵素:リパーゼ
  • 働きやすい温度帯は、冷水よりもぬるま湯で効きが良くなり、時間をかける程反応が進む
  • 熱をかけすぎると(一般的には60℃以上)酵素の構造が崩れ、触媒の働きを失う(熱変性)

 

3.黄麹の主な酵素

  1. (1)  「α-アミラーゼ」:蒸米のでんぷんはブドウ糖が長くつながり、枝分かれした構造で、水に溶けないが、これを短くし水に溶ける「デキストリン」の状態まで分解する酵素(2)「グルコアミラーゼ」:デキストリンをブドウ糖まで分解する酵素
  2. (1)「酸性プロテアーゼ」:たんぱく質をペプチドまで分解する酵素(どちらもアミノ酸の鎖状結合物で、長いものをたんぱく質・短く切れた物をペプチドと言う(2)「酸性カルボキシペプチダーゼ」:ペプチドをアミノ酸に分解する酵素

 

 

4.アルコール発酵の進み方の分類

  1. ワインの発酵:単式発酵(ブドウに含まれる糖を酵母がアルコール発酵するシンプルな物)
  2. ビールの発酵:単行複式発酵(粉砕した麦芽にお湯を添加して60℃強に保持し、麦芽に含まれる酵素の力で麦芽のでんぷんを糖へと分解(糖化)する。その後麦汁に酵母を添加して発酵させる。糖化とアルコール発酵が独立している発酵パターン。
  3. 日本酒:並行複式発酵(醪の中で、蒸米のでんぷんが麹の酵素によ糖化されるのと並行して、酵母によるアルコール発酵が並行して行われる発酵パターン。この特徴の一つは、発酵中に糖が補充されるのでアルコールの高い酒を造りやすい

 

※こちらもご覧ください!動画でご説明しております!

★酒chいし井講座第八回 発酵と微生物と酵素の関係②【酒chいし井のSAKE DIPLOMA的日本酒講座】

 

 

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