■日本酒基礎講座(8)「日本酒の製造工程(概略)」

前回まで日本酒に関するよく聞くワードの説明を行ってまいりましたが、今回から日本酒の製造工程のご説明を行ってまいります。

 

まずは日本酒の発酵のメカニズムを説明と、その後で日本酒の製造工程の概要を説明して行きましょう。

日本酒の製造工程

 

皆さんもご存じの通り日本酒は米から作られます、でもワインやビール(※1)と違い米は糖分を持っていない為そのままではアルコール発酵が出来ません、主要成分がでんぷんである米を発酵させるためには、でんぷんを糖に変化させなければいけません。

 

※1)ワインは原料である「ブドウ」が持っている「ブドウ糖」を元に、ビールは麦芽が持っている「麦芽糖」を元に、酵母がアルコール発酵して出来ます。

 

そこで、登場するのが「麹」です、そうです皆さんもお米の粒が残っている甘酒をお飲みになった事があると思いますが、お米の主成分であるでんぷんを糖化できるのが「麹」なのです。

日本酒の発酵の第一段階は、麹の力によりでんぷんをぶどう糖に変化させると事から始まります。

次に、麹が作り出してくれたぶどう糖を「えさ」にアルコールを造りだす「酵母」が頑張り、アルコール成分が生み出されます。科学的に説明すると、酵母が糖を分解し、アルコールと二酸化炭素が生成されます。

酵母のこのアルコール発酵(分解)により、日本酒は出来上がります。

 

 

 

日本酒発酵のメカニズム

さて日本酒の発酵の基礎も分かった所で、今回の本題の日本酒の製造工程をご説明致します。

 

まず、最初に日本酒の製造工程概略を、図でご説明いたします。

玄米 → 精米 → 洗米・浸漬 → 蒸し → 製麴 → 酒母 → 3段仕 → 醪管理(発酵)→ 搾り

                          

では、原料となるお米がいかに日本酒になっていくかご説明致します。

原料のお米はどのようなものかと言うと、最初は当然何も加工していない玄米から造る事となります。

 

行程①精米

その玄米を、お酒造りの為に精米いたします。精米歩合に関しては、以前もご説明した通り、お酒のランク(大吟醸・吟醸・純米・本醸造・・・)により、精米歩合が異なって来ます。

また、玄米を精米する設備(精米機)を持ち、自分の所で精米する「自家製米」蔵元と、精米業者に委託する「委託精米」蔵元に分類されます。

 

行程②洗米・浸漬(限定給水)

精米された白米を、次に洗います(洗米)。洗米は、その蔵元の考え方により、頑なに手洗いを続けている蔵元から、洗米機を導入している蔵元、最新設備の連続洗米機を有する蔵元まで種々あります。洗米の主な目的は、お米を綺麗に洗う事で、この時に余分な糠や米の粉を取り除きます。

洗米と同時に行われる作業が、「浸漬」です。これは、お米を一定時間水に漬けて、お米に水分を吸わせる作業です。麹作りやお酒造りに適した蒸米を作る為に、水分量の調節が必要で、理想的な含水率(水分量)にする為に、限定した時間だけ浸漬し、水分量の調整を行う事を「限定給水」と言います。

 

行程③蒸し

次に、洗米したお米を蒸します。普通、食べるお米はお水を入れて炊きますが、お酒用のお米は、全て蒸し上げます。

お米を蒸す作業は、ボイラーにより発生させた乾燥蒸気により蒸し上げます。乾燥蒸気により蒸し上げられたお米は、お酒を造るのに理想的な「外硬内軟」の状態になるよう、細心の注意を払われます。「外硬内軟」とは、より良い麹作りとより良い発酵の為に、お米の外側は硬くしっかりしているが、中心は軟らかく蒸し上げられた酒米の状態を言います。

 

行程④製麴(せいきく)=麹作り

蒸し上げたお米に麹菌を振りかけ、麹菌を繁殖させた「麹(米麹)」を作ります。

製麴は、通常「麹室(こうじむろ)」と呼ばれている、高温多湿な麹作り専用の部屋で行われます。昔から、酒造りは「1:麹、2:もと、3:造り」と言われていて、麹造りは酒造りの中で一番大事な作業です。

 

行程⑤酒母造り

麹が出来たら、その麹に水(湯)と酵母を加え、お酒の元となる「酒母」を作ります。酒母を作る理由としては、最初投入されたばかりの麹と酵母は、まだ繁殖力が弱く、雑菌に負けてしまう可能性が高く、いきなり大量のお米を発酵出来ない為、最初は小さなタンク(酒母タンク)に少量の麹と水(湯)・酵母を加えて、大事に麹と酵母の繁殖を見守ります。その行程が「酒母」造りになります。また、この酒母造りの行程で、酒の造り方「生酛・山廃・速醸」でそれぞれ違う行程となります。

※「酒母の造り方」については、後日新たなテーマを立てて、詳細のご説明を致します。

 

 

行程⑥仕込み(3段仕込み)

酒母が完成したら、今度は最終的に造りたい酒量になるように、さらに蒸米と麹と水を加えて行きます。通常は、一度に全量の麹・蒸米を加えると均一な管理が出来ない為、3度に分けて投入します。その仕込み方を3段仕込み<初(そえ)・仲(なか)・留(とめ)>と言い、毎日連続して作業されます。

通常「仕込み」と言うのは、この蒸米と麹を加えて行く行程の事を言い、醪管理の事やお酒造り全体の事を指して言う言葉ではありません。

また、仕込みの蒸米の量は、いきなり少量の酒母に大量の蒸米を投入しても、発酵が追いつかないので、蒸米の量を段々増やしていきます。通常は、初(そえ):仲:留=1:2:4の比率で、投入する蒸米の量を増やしていきます。

また、最初の仕込み「初(そえ)」の翌日は、そえ麹と蒸米がなじみ、麹と酵母が力を発揮できる環境を作る為に、「踊り」という中休みの日を一日取ります。

(実際は、仕込みは「初(そえ)」・「踊り」・「仲」・「留」と4日間に渡る作業となります)

 

行程⑦醪(もろみ)管理・発酵

仕込みが終わった醪は、毎日アルコール度数・日本酒度・酸度・アミノ酸度等の主要指標の成分分析を行い、状況を把握したうえで管理されます。

管理の方法としては、エアコンによる醪室(発酵部屋)の温度管理はもちろん、各タンクにウォータージャケットと呼ばれる冷却水を循環させるシート状の物を巻き付け、発酵状況により冷却水を循環させたり、止めたりして温度管理します。

また、最近はサーマルタンクと言う、断熱効果を高めた2重構造タンクに、冷媒を循環させ、タンク全体の温度管理を自動で行える、ハイテクなタンクもあります。大吟醸などの上のクラスのお酒は、サーマルタンクで管理される事が多いです。

この発酵期間は、醪の量や酵母・お酒の種類によっても異なりますが、通常20~30日ぐらいかかります。

発酵の経緯を観察し、アルコール度数やその他の数値も問題なく仕上がった醪は、杜氏さんの判断により、次の行程「上槽(搾り)」に入ります。

 

行程⑧上槽(搾り)

成分分析の結果、そのお酒の発酵が十分に進み、製品化できると判断された醪は、清酒(日本酒)と呼べるお酒にするために、搾られます。この搾る行為を「上槽」と言い、搾り方には、「基礎講座(4)搾り方」で説明した通り、3種類あります。

  1. 袋吊り
  2. 槽(ふね)搾り
  3. 圧搾機(やぶた)搾り

一番一般的な搾り方は、「3.圧搾機(やぶた)搾り」で、圧搾機の大多数シェアを占めるメーカーの名前を取って、通常「やぶた」と呼ばれます。

この、上槽の行程で、お米の溶けた白濁した部分や、残っている米粒の部分は酒粕として分離されます。

こうして、日本酒(清酒)が出来上がります。この後、製品として出荷されるための、後工程に入ります。

 

 

 

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