■日本酒基礎講座(2)「季節のお酒について」

季節のお酒の名称

今回は第二回目として、季節のお酒の名称とその内容を解説します。

季節のお酒と言うと「新酒」「あらばしり」とか「ひやおろし」「秋あがり」などの言葉をお聞きになった事があると思います。

何となく季節感は分かるものの、詳しく説明は出来ないものが多いのではないでしょうか、この場で詳しくご説明させて頂きます、まず最初に季節のお酒の名前から

 

冬・新酒の時期
新酒・あらばしり・しぼりたて・初しぼり・元旦搾り・立春搾り・・・
> 春の酒
> 夏の酒・初呑み切り
> ひやおろし・秋あがり

 

各季節のお酒について詳しくご説明します

 

<冬>

新酒

文字通り今季新たに造られたお酒の事。厳密にいうとその年に収穫された新米で醸されたお酒の事。

 

あらばしり

お酒を搾った時に一番最初に出てくるお酒の事で、お酒を搾り機にかけてすぐにほとばしり出てくる薄濁った部分の事。非常にフレッシュでみずみずしいが、あらけずりで荒々しい感じのお酒である。「あらばしり」の部分は、お酒の搾り初めの時に毎度出て来る物だが、新酒の時期のお酒のあらばしり部分だけが珍重され、その名前を冠した商品として出てくる事が多い。一部の酒蔵では、新酒の事を「あらばしり」と名付けて出して来る所があるので要注意。

ちなみに、あらばしりの次の順番に当たる、濁りが消えて澄んだ部分を「中取り」とか「中汲み」と言う。あらばしりよりも中取りの方が、味が安定していて、一番おいしい部分と言われている。

加えて、お酒の搾りの最後に、通常の加圧では搾れなくなり、さらに圧力をかけて搾った部分を「責め(せめ)」という。責めのお酒は、雑味やえぐみが多く、普通は下位のお酒に混ぜられる事が多い。

しぼりたて

文字通り搾ってすぐのお酒の事で、すぐに瓶詰めして出荷されるもの。新酒の早いタイミングのお酒に名づけられることが多い。

 

初しぼり

その酒蔵で今季の酒造りの一番最初に搾ったお酒の事。「新酒が出来ました」という報告と、「今年も無事お酒造りが出来た事への感謝」を込めて、初しぼりと名付けて出して来る酒蔵が多い。

 

元旦搾り・立春搾り

文字通り、元旦の早朝や立春の早朝に搾ったお酒の事。縁起物として、搾ってすぐに瓶に詰めて、酒屋と協力の上、当日中に届けられる様努力する蔵元がある。

 

 

<春>

元々、春は新酒が続けて販売される時期でしたが、最近は「春の酒」と名付けられるお酒が登場してます。

春の酒

文字通り「春の酒」と名付けられているこのお酒たちは、新酒の時期が過ぎた春・桜の咲く頃に登場する、正にお花見に合わせたお酒たちである。桜にちなんでピンク色のラベルや、ピンク色の瓶に入っている物が多い。中には、桃色の濁り酒(後述)もある。

 

桃色にごり酒

桃色の濁り酒は2種類の製法によって造られる。

 1)赤色発色酵母使用:酵母の中に、発酵途中に赤色色素を生成する物があり、その酵母を使って、ピンク色の濁り酒に仕立てられた物。発酵力が弱く造るのが難しいので、極少数の蔵元しか手掛けておらず、種類は限られる。

 2)古代米使用:玄米の皮の部分が赤黒い古代米を一部使用して造られるお酒。原料の一部に古代米を玄米に近い状態で加える事により、お酒に古代米の赤色を付けた物。

 

<夏>

夏に出されるお酒は、昔から伝わる物としては、「初呑み切り」ぐらいであるが、近年日本酒の販売が落ち込む夏の時期に、拡売を狙う為に「夏の酒」が各蔵元から発売されている。

初呑み切り

初夏の時期(七夕前後)に、春先に仕込んでタンクで貯蔵してあるお酒の味を見て、各タンクのお酒の発売時期を見極めると同時に、その時に一番おいしいお酒を「初呑み切り」酒として、発売する蔵元がある。

 

夏の酒

前述の通りここ20年で一般的になった、水色の瓶と水色系の涼しげなラベルを使用し、「夏」という名前を付けて初夏から夏にかけて発売されるお酒。味的には、夏の暑い日に飲みたくなるような、アルコール度数を押さえて飲みやすくした軽快なタイプや、酸を利かせてさっぱりとさせたタイプ、辛口できりっとしたタイプに大別される。

 

<秋>

今でこそ冷蔵技術が発達し、年中生酒を流通させることが出来るようになったが、昔は生酒のまま保存する事は考えられず、春先に全て火入れして保管するのが常であった。

そのお酒たちが半年熟成され、一番おいしくなった「秋」に登場するのが、秋のお酒「ひやおろし」と「秋あがり」である。

 

ひやおろし(冷卸)

冬から春にかけて造られたお酒を搾った後一度火入れし、秋まで半年熟成して二度目の火入れをせずに出てくる秋のお酒。

なぜ、秋のひやおろしが一番美味しいかと言うと、火入れ(加熱殺菌処理)をした直後のお酒は、火入れにより味があばれて、雑味やえぐみが出てしまい、美味しいと言えるお酒でなくなる。でも、そのお酒を最低3か月、出来れば半年熟成させると、生の時よりも&生で熟成させたお酒よりも穏やかに熟成し、丸みのある落ち着いたお酒になる。

それが、秋の9月~10月に出てくる「ひやおろし」である。

「ひやおろし」は、搾ってすぐに一度火入れされ、二度目の火入れがされていない「生詰」である必要がある。

「ひやおろし」の名前の由来は諸説ある。一番有力な説は、その昔冷蔵庫の無かった時代は、春先に搾り一度火入れをしたお酒を蔵の一番涼しい場所(貯蔵庫)に保管していた。そのお酒を夏の暑い時期に出荷する折には、お酒が悪くならない様に、二度目の火入れをして出荷するのが通常であった。(スーパー等で販売されている紙パック酒などがその類)それが、丁度9月から10月の秋に移り変わる時期(貯蔵庫の温度と外気温が同じ温度になる時期)になると、気温が下がりお酒が悪くなる可能性が低くなるので、二度目の火入れをせずに、「冷や」のまま「卸せる」お酒として、「ひやおろし」と名付けられるようになった。

瓶火入れ

秋あがり

これは、前述のひやおろしと同様、春先に造られたお酒が、半年熟成され、味が上がったものを、「秋あがり」と言う。ひやおろしとの区別は、ひやおろしは春先に一度火入れされている「生詰」のものしか「ひやおろし」と呼べないが、「秋あがり」は秋になって味が上がっているお酒であれば全て「秋あがり」と言えるので、生で熟成されたお酒にも「秋あがり」と名付ける事が可能。

 

いかがでしたか?季節によりお酒の名前が変わるのは、風情があって正に日本の文化と言えるでしょう。この季節のお酒はその季節の旬の料理に良く合います。

皆さんも、ぜひ季節のお酒と共にその季節を堪能して下さい。

 

次回は「お酒の搾り方」についてご説明させて頂きます。

 

タイトルとURLをコピーしました