■日本酒基礎講座(3)「お酒の搾り方について」

日本酒の搾り方

第三回目は、お酒の搾り方について解説します。

皆さん、お酒を搾ると言うと???の方も多いのではないでしょうか。

日本酒は、お米からできるお酒だと言う事はご存じだと思いますが、お米が溶けて発酵している状態(醪(もろみ)と言います)のまま出荷する事が出来ません。

酒税法で、お酒は醪を搾った(濾した)もので無いといけないと規定されているのです。

ちなみに、搾らない(濾さない)お酒をどぶろくと言い、通常はそのまま出荷すると日本酒(清酒)といて扱う事が出来ず、「その他の醸造酒(リキュール等と同等)」扱いとなり、酒税率が高くなってしまいます。(税金分が高くなるので、商品の値段も高くなります)

※これに関しては、小泉元首相が実行した経済特区の中に、「どぶろく特区」という物があり、この特区の認可をもらっている地域の酒蔵のみ、どぶろくを「日本酒(清酒)」として販売する事が許されております。 

さて、前段はこれくらいにして、今回は醪を日本酒たらしめる行為「日本酒の搾り方」について詳しくご説明いたします。 

まず、日本酒を搾る行為を「上槽」と言いますが、その搾り方は一般的に

①    自動圧搾機による機械式搾り

②    槽(ふね)搾り

③    しずく搾り

3種類に分類されます。

 

 

自動圧搾機による機械式搾り

最初に一般的な搾り方(お酒の搾り方の7-8割を占めています)の自動圧搾機による機械式搾りについてご説明します。

 

やぶた

自動圧搾機は、一般的に「やぶた」と呼ばれており、その名の由来は、自動圧搾機メーカーの中で圧倒的なシェアを誇る「薮田産業」の名前を取って、「やぶた」と呼ばれています。他にも同様な機構の機械を製造しているメーカーがあり、蔵元により他メーカーの物であっても「やぶた」と呼ぶ所もあれば、そのメーカー名で呼ぶ所もあり、まちまちです。

さて、実際の搾り方ですが、機械自体は白いアコーディオンの様な部分に、上からもろみを流し込み、空気圧をかけてゆっくりと搾って行きます。

搾られたお酒は、横に設置してある小さなタンクに貯められ、ある程度貯まると大きなタンクに移します。

 

やぶた搾りのメリットは、醪とお酒が機械の中の圧搾プレートに挟まれた、ほぼ密閉空間で搾られるため、お酒が酸化しにくいのが良い所です。また、労力的にも非常に手間なく簡単に搾れる為、お酒の上槽方法の圧倒的なシェアを占めています。さらに、最近はシュワシュワとガス感のあるお酒が出てきていますが、空気に触れにくいため、発酵していた時の炭酸ガスを残したまま搾る事が出来ます。

 

デメリットとしては、機械自体が高価なのと、搾る部分の白いパネル自体を、大体1シーズン使い続けることになるので、前に搾ったお酒の風味や香りが残り、移ってしまう事が有ったり、パネルの間にゴムのパッキンをかませている為、その部分を通ったお酒に、かすかにゴム臭が付いてしまう事が有ったりする所です。ただ、このゴム臭に関しては、最近はシリコン製の物が開発され、気にならないレベルになっています。

 

槽(ふね)搾り

槽(ふね)と呼ばれる設備を使って搾る物です。

(ふね)とは、人が一人から二人寝られる程度の大きさの浴槽のような形状の物の事で、この中に布袋に詰めた醪(もろみ)を並べて、布袋の自重で搾って行く方法です。

 

槽搾りのデメリットは、非常に労力がかかる所です。まずは、もろみを布袋に詰める作業が大変な重労働で、ポンプにつないだホースにより、一つ一つ布袋に醪を詰めて行くのですが、詰めたそばからお酒がほとばしり出てくるので、時間との勝負になります。

 

あと、醪が入った布袋は、相当の重さになる為、その布袋を槽(ふね)の中に順番に綺麗に並べて行くのも相当の重労働です。

 

次に、醪を入れた布袋の積み替え作業が大変です。布袋は、何段も重ねるので、下段の袋は上からの重みでよく搾られますが、上段の袋は余り圧力がかからないので、しっかりと搾られません。ですので、ある程度の時間経過後(半日~1日)、醪の入った布袋の積み替え作業が必要となります。この時に、上段にあった布袋を下段に積み替え、下段にあった布袋を上段へ積み込みます。こうする事によって、各布袋を均一に搾って行く事が出来ます。ちなみに、布袋の自重で搾れなくなったら、最後に上部の油圧ポンプにつながった板で全体的に圧力をかけて搾って行きます。通常この部分が、前回説明した「責め(せめ)」の部分となります。

 

槽(ふね)搾りのメリットとしては、機械で搾る事によってつく可能性がある、いらない匂いが付かない事です。おまけに、布袋は毎回簡単に洗えるので、清潔的であり、かつ匂い移りの可能性を極力抑えられる所にあります。

しかし、布袋に入った醪は常に空気に触れるので、酸化しやすいのと、炭酸ガスを残したまま搾ることが出来ません。

 

しずく搾り

一番時間と手間ががかかる搾り方で、通常新酒鑑評会などに出品する一番いいお酒(大吟醸クラス)を搾る時に用いられる搾り方です。

雫搾り風景

しずく搾りは、槽(ふね)搾りと同様、もろみを布袋に詰めて搾って行くのですが、大きく違う所は、しずく搾りの場合、醪が入った布袋をタンクの上部に渡した棒に吊るし、何も圧力をかけない状態で、自然の重力によりしたたり落ちるお酒だけを集める搾り方です。

この方法だと、全く圧力がかからないので、お酒本来の香りや味わいを損なわずに搾る事が出来る方法です。

ですが、全く圧力をかけないので、搾りには相当の時間を要します。

雫搾りアップ

また、この搾り方で搾られるお酒は、相当良いお酒ですので、搾ったお酒をすぐに「一斗瓶」に詰めて保管します。一斗瓶はその名のごとく、18リットルしか入らないので、まめに瓶の交換作業が発生します。ちなみに、18リットルずつ保管するのは、お酒の搾りの過程が進行していく中で、お酒の味が変わって行くので(あらばしり→中取り→責め)その過程ごとのお酒を細かく分けて保管し、一番おいしい部分を鑑評会に出品する為に、非常に労力がかかる作業をします。

 

以上のように、お酒は様々な搾り方で造られています。

お酒のラベルを良く見ると、「槽搾り」とか「しずく搾り」とか書いてある物があります。そのお酒は、上記の通り、手間がかかる搾り方をされたこだわりのお酒であると言う事になるので、心して味わってください。

 

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

次回は、お酒のラベルで良く目にするワード「無濾過生原酒」についてご説明させて頂きます。

 

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