母酒.4
前回に続き、速醸酒母の育成工程の内、3日目以降をご説明いたします
速醸酒母の育成工程3日目
膨れ誘導
- 通常仕込みから7日目の「膨れ」(酵母の増殖とアルコール発酵が始まる時期)に至る迄の間に、加温操作をして蒸米の溶解・糖化を促進する時期の事を「膨れ誘導(膨れまで誘導する期間の意味)」という
- そして、この加温操作のことを「前暖気」という
- 前暖気は、酵母の増殖をできるだけ抑えて糖化を行わせることが目的
- 酒母を局部的に加温し、2~3時間後に暖気を抜く際に暖気を使って攪拌して全体の温度を2℃上げ、その翌日には品温が1℃下がり、酵母の増殖を抑えるという、ジグザグの温度経過を取る
- 翌朝までに1℃下がるのは、この時期は酵母数が少ないために酒母の発熱が無いに等しいためである
- 暖気とは、いわばバケツ大の湯たんぽで、伝統的には木製であるが、現在は衛生面も考慮して金属製の物が主流である
- 暖気に60~70℃の湯を詰めて使用すると、酒母と接する部分が30℃以上に保たれる、2~3時間経ったら、暖気で酒母を掻き混ぜるようにしながら暖気を抜く
- 打瀬から暖気操作の品温経過はこちらをご覧ください
速醸酒母の育成工程6~8日目
膨れ
- 初暖気を入れてから3~5日目になると品温が15℃程度に上昇し、芳香を発するとともに、十分な甘みが出て糊味が無く、ブドウを思わせる甘酸の調和のとれた濃厚な味となって来る
- 酵母の増殖も盛んとなり、二酸化炭素を出して容積を増してくると同時に、酒母表面に筋状の泡が現れてくる、これを「膨れ」という
- 膨れ時の成分値は重要な指標である
- 膨れ誘導以降は暖気表面の温度を25℃(湯温暖気)として、全体の温度を徐々に上げて行き、通常1日で湧付きに導く
- 膨れ時の標準的な成分表はこちら
速醸酒母の育成工程7~9日目
湧付き
- 膨れからさらに進み、酵母の増殖・発酵がいっそう盛んとなって二酸化炭素を出し、酒母の表面が泡面になった状態を「涌付き」という
- 成分面では、膨れ時のボーメより1減少した時を涌付き開始とする
- ボーメが減少するのは、酵母によって糖が消費されたためである
- 十分に沸付いたならば、暖気で品温を2~3℃上昇させて、さらに酵母の増殖を促進させる
- 酒母の前半が酵母の増殖を抑え蒸米の糖化に注力していたのに対し、涌付き以降は糖化だけでなく酵母の健全な増殖に注力する
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★酒chいし井講座第15回 速醸酒母の育成工程(2) 酒母④【酒chいし井のSAKE DIPLOMA的日本酒講座】