■日本酒基礎講座(10)「精米.1」

前回日本酒の製造工程の概略をご説明しましたが、今回から各工程を詳しくご説明します

精米について

そもそも、なぜ精米しなければいけないのでしょうか?

お米の主要成分は、でんぷんが7割、続いて、たんぱく質が7~8%程度です

でんぷんは麹が出す酵素により、ブドウ糖に分解されますが、たんぱく質は、麹が出す酵素によりアミノ酸に分解されます

アミノ酸は旨味成分で、ある程度はこくや旨味となりますが、多すぎると味が濃くなり、くどいお酒になってしまいます

その上、アミノ酸が多いと糖と結合するメイラード反応が起きやすくなり、熟成して色づきやすくなります

たんぱく質は、米の表層部に多く、中心部分に近づくほど少なくなります(酒造好適米の場合、中心部には心白と呼ばれる白色部分が多く存在し、その心白はでんぷんの結晶体である)

 

※表層部の青色がついている部分に、たんぱく質や脂質が多く含まれています

 

日本酒を造る場合、原料米を精米する事により、たんぱく質含有率を下げ、でんぷん価を高め、脂肪やミネラルも低減させ、味わいをよりすっきりとさせるのです

精米歩合を高めることにより、たんぱく質や脂質を多く含む表層部を取り除けるので、よりたんぱく質含有率を下げ、純粋でんぷんに近くできるのです

ですので、純粋に精米歩合を高めていけば(大吟醸のようにより磨いていくと)

純粋でんぷんに近くなる ⇒ ・純粋ブドウ糖に近くなる ⇒・純粋アルコールに近くなる事になりよりすっきりとした味わいになっていくのです

ただ、大吟醸や純米大吟醸でただ単に味わいがすっきりしているだけでは売れないので、香りが出るような造りをするので、「大吟醸」や「純米大吟醸」と名の付くものは、華やかな香りをまとったものが多くなってます

※これには、鑑評会出品酒も絡んでいるので、いつか別テーマでご説明いたします

 

精米の歴史

江戸時代末期に、灘で水車による精米が開発されるまでは、日本酒の原料米の精米作業は、臼と杵を使った、人力による足踏み精米でした

地中に埋めた臼に玄米を入れ、足踏みで上下するように設置した杵で米を搗くものです

江戸時代末期に、灘で開発された水車精米は、水車の動力で杵を自動で上下させ、臼の中の玄米を搗いていくもので、人手を必要とせずに精米できる画期的なものでした

その精米方法では、12時間で90%程度まで精米できたと記録が残っています

また、臼と杵を用いた足踏み精米では、ではせいぜい90%精米程度しか精米できませんでしたが、石臼を用いた水車精米では精米歩合85%から75%まで精米出来たとの記録も残っています

その後大正時代に、米同士の摩擦により米の表面を削っていく方法である「横型精米機」が開発されました

それが、1933年に革新的な「竪型精米機」が開発され、またたくまに全国に広がりました

竪型精米機は、金剛砂と呼ばれる研磨剤を固めたロール状の砥石=金剛ロールを回転させ、直接米の表面を削っていく、精米方法です

竪型精米機の登場により精米歩合は格段に上がり、40%程度まで磨けるようになったのでした

この精米技術の革新により、吟醸造りが出来るようになり、日本酒の格段な品質アップが図られました

その竪型精米機では、600kg(10俵)の玄米を精米歩合70%まで削るには10時間、50%まで削るには、50時間もかかります

精米歩合が上がる程精米が長時間化するので、原料米が摩擦熱により長時間高温になり、米の乾燥が進んでしまいます

乾燥した原料米は、洗米や浸漬時に急激に水を吸い割れてしまう危険性が高くなります

吟醸・大吟醸とお米をさらに磨く日本酒は、この後の工程の洗米や浸漬作業に細心の注意が必要となります

 

※こちらもご覧ください!動画でご説明しております!

★酒chいし井講座第二回 精米の理由・歴史 精米①【酒chいし井のSAKE DIPLOMA的日本酒講座】

 

 

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