日本酒の辛い・甘い.2
今回の日本酒講座は、前回に引き続き日本酒の辛い・甘いについてご説明いたします
前回は、日本酒度を中心に、日本酒の発酵メカニズムによる、甘口・辛口の日本酒の造り方などについてご説明しましたが、今回は「皆さんが[辛口]と感じる日本酒は何なのか?」 について、お話いたします
まず、私がお店で接客をさせて頂いている時に、お客様に味の好みをお聞きすると「辛口のお酒」とおっしゃる方が多くいらっしゃいます
そこで、私は超辛口のお酒をお出しするのですが、たまにそのお酒を「甘い」と言う人がいらっしゃいます
それとは逆に、甘口やフルーティーなお酒が好みの方に、世間一般的にフルーティーと言われているお酒をお出しすると「辛い」と言う人もいらっしゃいます
以上の様に、お酒の味の感じ方は十人十色で、全員が全員同じお酒を同じような味でとらえている訳ではありません
では、日本酒の味は皆さんの中でどのように決められているかと言うと、研究者でない私は詳しくは分かりませんが、人それぞれ味の感じ方の癖があると言う事は事実の様です
お酒を飲む時に、味を感じる部分とタイミングとして
- 口に近づけた時に鼻で感じる香り=立ち香
- 口に含んだ瞬間に感じる香り=含み香
- 先で感じる味=甘み
- 舌の両脇で感じる味=酸味
- 舌の奥で感じる味=苦味
- 喉で感じる味=切れ(辛さ)
一口お酒を飲んだ時に、人は様々な部分でそのお酒を味わっています
上記の様に、口に含んだお酒の味をどう感じるかは、その人が味をどこで感じやすいかの「癖」によって決まって来るようです
確かに、最近の研究では、舌のその部分に特定の味を感じる味蕾があるわけではなく、同様な味蕾が舌全体に分布しているので、味は舌全体で均等に感じられるそうです
でも、その人の味の感じ方の癖は確実にあると思います
辛いお酒を飲んだ時でも、舌先で味を感じる癖がある人は、少しでも甘み成分を感じるとそのお酒を「甘い」と言います
同様に、舌の両脇で味を感じる傾向がある人は、お酒の味を酸っぱく感じがちです
舌の奥で味を感じる人は、苦みに敏感です
このように、人の味の感じ方の癖によって、同じお酒でも感じ方が大きく異なると言う事を覚えておいてください
味の感じ方
もう少し、味の感じ方についてご説明いたします。
日本酒の味には、甘・辛の他に、酸味・苦味・香り・渋み・旨味・味の濃さ等、様々な味の要素があります。人間の舌は、酸味を辛さととらえる傾向があり、良く酸味のあるお酒を「辛い」と言う人がいらっしゃいます
最近のはやりで、炭酸ガスを含んだ状態で瓶詰めされるお酒を最近よく見かけますが、炭酸も酸味の一つで、とかく「辛い」ととらえられがちです
一つの例として、栓を空けたてのコカコーラは、沢山糖分が入っているにもかかわらず、余り甘く感じません。非常にさっぱり感じます
それが、栓を抜いてから長時間放置して炭酸が抜けた状態のコーラを飲むと、甘くて甘くて仕方ない飲み物になっています
これは、人間の味覚では「炭酸の酸味」を辛さと感じ、糖分と打ち消しあい、さっぱりとした味に感じる事に他ありません
同じケースで、甘さと香りも紙一重で、甘いお酒をフルーティーと言う人もいます
では、日本酒の「辛さ」はどこで味わうのか?と言うと、自分が今まで様々な日本酒度のお酒を飲んだ経験を総合して、日本酒度による辛さは「喉の奥」で味わうものだと思っています
日本酒を飲んだ時に、喉に落ちていくときの味わいが、焼けるような「チリチリ」とした感じを覚えるお酒は、間違いなく「辛口」で、日本酒度も高いお酒である事が多いです
前回ご説明しましたが、日本酒度が高い=比重が軽い=糖分が少なく、アルコール分が優勢である事を表しているので、日本酒度が高い辛口のお酒は、アルコール感が高く感じられるので、喉に落ちていくときに、チリチリと刺激をともない、辛く感じられるのだと思います
以上説明してきた通り、日本酒の辛さは日本酒度だけでは推し量れず、その他の味とのバランスで成り立っていると言う事を、覚えておいてください
あくまでも、日本酒度はその日本酒の味を類推する為の、アドバイス的な数値要素だと思っておくと良いと思います