無濾過生原酒とは
第4回目は、お酒のラベルで良く目にする「無濾過生原酒」についてご説明いたします。
この「無濾過生原酒」と言う言葉は、日本酒に関する3つの用語の集合体になります。
・無濾過
・生
・原酒
この3つの言葉をそれぞれ理解できれば、このお酒がどういうものか良く理解できます。
今回は、このそれぞれの言葉について、対義語も含め詳しく解説いたします。
無濾過
まず、「無濾過」とは、文字通り「濾過していない」と言う事ですが、お酒の濾過とは何でしょう?前回ご説明した通り、お酒は搾って初めて「清酒・日本酒」と呼ぶ事が出来るようになります。そのお酒を、不純物などを取り除くために、一般的には「濾過」します。
その濾過のやり方にも、
濾過1)素濾過
濾過2)炭濾過
と言った、2種類のやり方があります。
素濾過
これは、紙フィルターや中空糸フィルター(浄水器などに使用されている濾過材)を使用し、不純物・混入物やにごり成分を取り除く濾過方法です。
普通、紙フィルターでは不純物・混入物のみを取り除く目的で、中空糸濾過機では、搾ったばかりのうすく濁ったお酒を、空気に触れて酸化させることなく、濁り成分を取り除く為に行います。
炭濾過
搾った後のお酒に、活性炭パウダーを入れ、その活性炭パウダーに色・雑味・えぐみ・苦味等を吸着させ、お酒の色と味をすっきりさせる濾過方法。
但し、炭濾過をすると、上記以外の旨味や香りなども吸着されてしまうので、必要以上にすっきりとした味わいになってしまいます。新潟の端麗辛口と呼ばれているお酒の多くは、この炭濾過されたお酒である事が多いです。
無濾過
上記の濾過作業を全く行っていない、搾ったままのお酒の事となります。
生
これは、お酒を殺菌する作業を一切行っていない事となります。
火入れ
「生⇔火入れ」と言った対比となりますが、日本酒の加熱殺菌処理は、通称「火入れ」と呼ばれ、65℃程度に5分から15分過熱して行います。より低温で時間をかけてやさしく火入れする蔵元もあります。
なぜ、加熱殺菌処理を行うかというと、搾ったままのお酒は「生酒」と言われ、その中に酵母や酵素並びに雑菌が生きている為、お酒が変質しやすい(味が変わりやすい)リスクがあります。その酵母や酵素・雑菌などを死滅(酵素は失活)させるために、加熱殺菌処理を行い、お酒をより安定させる目的で火入れ作業は行われます。
「無濾過生原酒」の「生」とは、加熱殺菌処理を一切行っていない、搾ったままのお酒である事を示します。
ちなみに、生酒にはどのような特徴があるかと言うと、火入れを行っていないので、フレッシュで味に躍動感が感じられます。
それに対して、火入れのお酒は落ち着いて、ゆっくりと熟成する為穏やかなイメージのお酒になります。
原酒
これは、水を加えてアルコール度数を下げる作業をしていない、搾ったままのアルコール度数を維持したお酒である事を示します。
ちなみに、この水を加えてアルコール度数を下げる作業を「加水」と言い、文字通り水を加えて、アルコール度数を下げて味口を整える(穏やかにする)効果を狙って行われます。
以上の様に、「無濾過生原酒」とは、一切濾過せず、火入れ作業もせず生のまま、加水もせずにそのまま詰められたお酒である事になります。
あえて、対義語を作るのであれば、「無濾過生原酒」⇔「濾過した火入れ・加水酒」とでも言う事になります。
■無濾過生原酒が人気があるわけ
冷蔵技術が発達していなかった昔は、お酒を生のまま出荷する事は全く考えられず、必ず火入れしていました。それが、冷蔵技術と輸送技術の進歩により、お酒の状態を維持しつつ、輸送・保管する事が出来るようになり、現在では普通に「生酒」が流通されるようになりました。
昔は、搾ってすぐのお酒は酒蔵に行かないと味わえないお酒として、酒好きの間では、非常に貴重な至福のお酒として、語り継がれていました。
その搾ってすぐのそのままの状態のお酒が、すなわち「無濾過生原酒」となります。
酒蔵を訪れた時に飲んだ、あの「搾ったままのお酒」をお店や家庭で味わいたい!という要望にこたえる形で、無濾過生原酒ブームが到来したのでした。
今回の「無濾過生原酒」の説明はこれ位にさせて頂きます。
次回はお酒の製造工程の説明に入ります。