今回は、いよいよ米を蒸す工程「蒸きょう」についてご説明します
蒸きょう
「蒸きょう」とはお米を蒸す事
でんぷんのα化
蒸きょうの目的はお米のでんぷんをα化し、麹菌が生産した酵素が働きやすく、米が溶けやすくする = でんぷんをブドウ糖に変わりやすくする = お米の糖化を進めやすくする事にあります
蒸米は、昔からさばけがよくて「外硬内軟」が良いとされています
現代風に言えば、「完全にα化され、表面が適度の硬さを保ちベタつかない物」となり、蒸米の硬軟と水分は、以後の製麹と醪に大きな影響を与えるので大変重要です
■でんぷんα化の模式図
でんぷんはブドウ糖が鎖状に結合したもので、でんぷんのままでは、鎖同士が接近・接触しており、長い鎖状の結晶のような構造をしています
そのでんぷんを、α化する事により、でんぷんの鎖同士が離れ酵素が入り込みやすくなり、でんぷんを分解する働きが出来るようになります
蒸きょうは、1.伝統的な甑か、2.連続蒸米機で行います
1.甑
まずは、甑での蒸きょうをご説明します
甑の熱源としては、伝統的な和釜をバーナーで加熱して蒸気を得る方法と、直接ボイラーからの蒸気を甑に吹き込む方法があります
⇒現代では、ボイラーで発生させた蒸気を吹き込む酒蔵が主流
甑は、本来大きな木桶を改造したものであり、底板に穴があいていて、その穴から蒸気が吹き込んでくる形状
この蒸気を四方八方へ分散させるのがコマ
その上には、サナと呼ばれるスノコ状の板があり、この上に布を引き浸漬米を張り込む
前日に張り込む酒蔵もあるが、蒸気が抜けるのを待ちながら逐次米を張り込んでいく「抜け掛け」が良いと言われています
甑での蒸きょう時間は60分
蒸気をさらに加熱すると100℃以上の過熱蒸気になる
過熱蒸気は、蒸米の表面の水分を奪って100℃の蒸気に戻るため、蒸しの後半は過熱蒸気を利用し、「外硬内軟」の蒸米に仕上げる方法も用いられています
また、蒸している最中の甑はこのような感じです
蒸し上がった後、甑から蒸米を取り出す作業を「掘る」と言うが、労力のかかる大変な作業になります
2.連続蒸米機
続いて、連続蒸米機についてご説明します
連続蒸米機とは、蒸気が豊富に吹き出すトンネルの中を網状のベルトコンベアによって、米を連続的に移動させて蒸すもの
通常放冷機と連結されています
お米の張り込みと、蒸米の取り出し作業が不要で、作業が効率的になる事が利点です
ですが、多くの酒蔵では、オーソドックスなクラスのお酒(普通酒・本醸造・純米)で使用されていて、上級クラスのお酒用の米は甑で蒸す事が一般的です
連続蒸米機での蒸し時間は50分
甑で蒸すよりも10分ほど短いです
※こちらもご覧ください!動画でご説明しております!
★酒chいし井講座第五回 蒸きょう【酒chいし井のSAKE DIPLOMA的日本酒講座】