前回までの2回で日本酒製造に関わる微生物と酵素の働きについてご説明しました
今回からは、日本酒製造の中で一番重要と言われる「製麹(せいきく=麹造り)」について、ご説明いたします
製麴.1
「麹」とは
蒸米のでんぷんやタンパク質などを分解する酵素を出す&酵母の増殖を促進するビタミンなどの栄養素を供給する役割を担う
+麹が生産する種々の成分が酒質に直接的・間接的に影響を及ぼす
製麹
麹造りの工程を「製麹」と言う
「製麹」とは:麹室と呼ばれる衛生的で温度・湿度をコントロールした部屋で、蒸米に麹菌の胞子をつけて生育させ、2日(48時間)後に麹を完成させる作業
室温は32℃位、麹室内の空気はかなり乾燥している⇐冬の冷たい外気を取り込んで暖めるので相対湿度が大きく減少するため
麹室は湿度が高いイメージがあるが、製麹の工程においては乾燥している方が良い
種麹
製麹に用いる「種麹」or「もやし」とは:玄米に胞子を着成させた物、または、麹菌の胞子を集めた粒状の物
日本酒造り用いるのは、ほとんど黄麹 (最近は、一部焼酎用の白麹を使うものもある)
酒母用・醪用、普通酒用・吟醸酒用など、目的に応じた種麹が販売されている
製麹手順
一日目
1.引き込み
麹室の大変大きく広い作業台である「床(とこ)」に36℃強まで冷ました蒸米を搬入 ⇒ 塊を揉みくずし全体に広げて温度ムラが無いようにし、35℃位の目標温度へ近づけて行く
2.種切り
小さな容器に入れた種麹を、蒸米から50cm以上高い所から静かに振っていく作業、作業は2回行い、胞子の沈降を待って上下反転させてから2回目を行う
放冷機の出口付近で種切を行う酒蔵もある
3.床もみ
蒸米の一粒一粒に均等に胞子がつくように皆で蒸米を徹底して混ぜる作業⇒その後敷いてあった布で包み、半球状あるいはベッドのマットレス状に蒸米を密に積み上げる+別の数重の布で包んで蒸米の乾燥を防ぐ
1時間後には発芽し、数時間後には増殖が始まる
見た目には、何も変わらず発熱も無いが、蒸米全体に増殖している
二日目
4.切り返し
二日目の朝固くくっついている麹の粒同士をバラバラにする作業 切り返し機やふるいを使用する酒蔵もある
5.盛り
切り返し終了後、直ぐに行う
他の形態の容器に盛り変える作業 ⇒ 麹菌が増えた分、発熱も旺盛になってくるので小分けして品温コントロールしなくてはならないため
今回の麹室の作業のご説明は以上です
次回は、続きとして盛った後の工程をご説明いたします
※こちらもご覧ください!動画でご説明しております!
★酒chいし井講座第九回 製麹の概要と製麹手順 前編 製麹①【酒chいし井のSAKE DIPLOMA的日本酒講座】